ふんわり優しい暮らし

少しずつ心を解放しています。

【コンビニ人間の感想/普通の人間って何だ?】

あけましておめでとうございます。

 

2019年1本目の記事はかっこよく新年っぽい内容を書こうと

妄想していたのですが、

お正月休みの暇つぶし対策にと何気なく手にとった

村田沙耶香さんの『コンビニ人間文藝春秋』という小説が

読みやすい上にあまりにも面白かったので、

新年にまったくふさわしくない空気を読めない内容ですが、

感想をまとめたいと思います。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

読んだあとに気が付いたのですが、

芥川賞受賞」「24か国語に翻訳決定」と本の帯に書かれていました。

大変に文学的評価の高い小説のようですが、

ミステリーやビジネス書、実用書は手にとっても、

文学小説は読まない私のような人間が読んでも、

さらっと楽しく読めてしまう内容でした。

そういうわけで、感想には文学的な観点を含んでおりません・・・。

 

【この本を読んだきっかけ/本好き芸人さんご推薦】

以前テレビで本好き芸人さん達が

すごく面白い本だと推薦されていたのをなんとなく覚えていて、

何か読むものはないかしらと探したときに

何冊かあった候補の中で一番薄くて安かった(文春文庫で¥580だった)のが

この本を選んだ決め手でした。

 

しょうもない決め手でしたが、

暇つぶしどころか刺激を受けてしまったのは、うれしい誤算です。

 f:id:amimia:20190102011230j:plain

(印象的だったところに付箋をつけたら、こんなことになりました)

 

【まずは、内容をさくっと】

主人公は、コンビニでアルバイトをしながら生活する

36歳の独身女性です。

彼女とコンビニを軸に、様々な人間模様が展開していきます。

(すみません、これ以上書けません・・・。

ネタバレしないであらすじを書くのって、難しいですね)

 

【小説・コンビニ人間を読んだ感想(1)~(7)】

それでは本題の感想に入ります。

箇条書きにすると、こんな感じです。

 

感想(1) コンビニ雑学が面白い

感想(2) 人間描写がリアル

感想(3) 普通じゃない存在を排除しようとしていた自分に気が付いた

感想(4) 主人公の冷静な目線を通して、感情移入せずに状況を観察できた

感想(5) 普通って何だろう?と考えるきっかけになった

感想(6) 自分自身に対して社会の普通を強要していたことに気が付いた

感想(7) 自分らしく生きるヒントになりそう

 

ボリュームが多めですが、自身の気づきを中心に書いたので

ネタバレはないと思います。

それでは、1つ1つ振り返っていきます。

 

【感想(1) コンビニ雑学が面白い】

最初の5ページは、コンビニに関する

ドキュメンタリー番組でも観ているような感覚になりました。

 

コンビニってこんなふうに売上を上げているのか、

こんなところから売上を得るための情報を得ているのか、

お店で働く人達はこんなことを考えているのか・・・。

 

最初の5ページだけでなく、随所でコンビニに関する

雑学的な学びを得ることができます。

普段コンビニをよく利用される方や、

好奇心が強く知識欲の高い方なら、

それだけでも十分楽しめる内容だと思います。

 

【感想(2) 人間描写がリアル】

これは私が普段は文学小説を読まないことが

影響しているのかもしれませんが、

ああ、こんな人いるよな・・・という感じで、

人間がリアルに描写されていたので

場面をありありと想像しながら

読みすすめることができました。

また、人間の生態について

学びを深めることができました。

 

【感想(3) 普通じゃない存在を排除しようとしていた自分に気が付いた】

主人公は、熱心にコンビニでアルバイトをしているものの、

就職も結婚もしておらず、どうやら恋愛もしていない様子なので

彼女の周りの人達の目からみると、

「ちゃんとした仕事をして、ちゃんとした恋愛をして、

自分の家族をもち、子供を育てる」という、

いわゆる日本の社会が期待する

“普通の36歳の女性像” から大きく逸脱しています。

 

そんな彼女に対して周りの人達は、

勝手に不安がったり、戸惑いや干渉、

お節介や身勝手な発言や思い込み、

心配や差別など、様々な反応を示します。

 

私は読みすすめながら少し気分が悪くなりました。 

それは彼女が気の毒という感情移入ではありません。

自分の普段の行動を省みて、私自身も、

人に“普通”を押し付けていたなと思ったからです。

 

あからさまに態度で示すことは少ないけれど、

自分が“不快、理解できない、面倒”と感じる人達に対して、

心の中では主人公の対する周りの人達と同じような

反応をしていると、気が付きました。

 

私は、どちらかというと、

自分を主人公の立場(世間の普通から外れた人)だと思っていました。

 

私は幼い頃は集団になじめず、

大げさに言えば苦労して工夫を重ねて自分を社会に適応させて

今ではなんとか集団に馴染んで仕事をしているので、

自分自身を“社会に普通を押し付けられて自分を見失った被害者”みたいに

感じていたところがありました。

 

ブログの記事にも、今までの苦しみを乗り越え

これからは自分軸で生きていきたいという思いを綴ってきました。

 

でも私自身も、“普通”を人に押し付けていたなと思います。

 

また、教育と紙一重な部分があるので難しい問題だと思いますが、

仕事の現場では無意識に自分や会社の基準に従って

相手を矯正しようとしたこともあるかもしれません。

  

書いていて、恥ずかしくて情けなくなってきましたが、

新年早々、自分のダークな部分をみつめるきっかけになりました。

 

 【感想(4) 主人公の冷静な目線を通して、感情移入せずに状況を観察できた】

この小説が面白いなと思ったことの一つが、

主人公自身の周りに対する反応です。

 

主人公は、日本社会が期待する普通の36歳女性像から

自身が大きく外れていることに対し、

周りがいちいち干渉してきて面倒には思っていますが、

悲観しておらず、誰のせいにもしません。 

 

自分を異質として扱う周りの反応に気が付いた

幼少期からから現在まで、

主人公は一貫して、冷静に自分自身と社会との距離感を分析し、

周りから余計な干渉を受けないために、

様々な対策や工夫を淡々と続けています。

 

私はこの主人公の冷静な視点を通して

“社会にとっての普通じゃない人”に対する様々な人の反応を

良い・悪いを判断せず、冷静に観察するこができました。

 

感想(4)で書いた気づきも、

主人公のこの冷静な目線があってこそだなと感じています。

 

【感想(5) 普通って何だろう?と考えるきっかけになった】

自覚の有無はともかく、人には多かれ少なかれ、

社会の期待する自分と、本来の自分に

大きな隔たりがあるのではないでしょうか。

 

感想(4)の内容と重複しますが、

無意識のうちに自分が“普通”を排除する側にまわることもある。

 

多くの人は自分が“普通”だと思い込んでしまうけれど、

完璧な人はいないように100%普通な人もいないし、

時代やコミュニティが変われば“普通の基準”も変わってくる。

さらにいうと、人によっても “普通の基準”は様々。

 

世の中にはたくさんの人がいて、

平気で相手の権利を奪うような人もいるので

何でも受け入れなきゃいけないとは思わないけれど、

 

“自分の事情と相手の事情がそれぞれあるのだ”という前提を

自分の中にもっておきたいなと思いました。

 

【感想(6) 自分自身に対して社会の普通を強要していたことに気が付いた】

感想(3)で書いたように、

私自身も“自分の中の普通の基準”から外れる人に対して

自分の価値観を押し付けようとしていたという

ダークな側面に気が付いてしまいましたが、

 

自分自身に対しても同じように、“世間の普通”を押しつけていたという

ちょっと恐ろしいことに気がついてしまいました。

 

幼い頃の私は、ちょっと変わっていたらしく、

何も考えないで過ごしていると目立ってしまい、

周りから異物扱いを受けるタイプでした。

でもそれを楽めるようなタフな子供ではありませんでした。

 

注目されるのが苦手で、いい子ちゃん願望の強かった私は、

社会に適応するために、幼い頃から自分の感情を押し込め

目立たないように、世間の考える普通の基準から外れないようにと、

必死に努力してきました。

 

そんな私の自分に対する扱いは“世間の普通”を一方的に押しつける行為であり

ものすごく暴力的だったと気が付きました。

 

それは当時は力もなく知識も判断力もない私が、

自分を守り、周りを困らせないようにするため、社会に適応するために

仕方のないことだったという側面もあるので

100%否定することでもないと思います。

 

努力の過程で知らない間にPDCAサイクルをまわし続けたので、

そのときの経験で観察力や分析力が育ち、

今の仕事や自己実現に繋がっていると思います。

 

それでも本来ありたかった自分を

一方的に排除してきたことには変わりがないので、

今も生き難さを抱えているのは当然な気がします。

 

【感想(7)自分らしく生きるヒントになりそう】

つい最近まで、私は自分を“世間の普通”という枠に無理矢理当てはめてきたことを

自覚していませんでした。

周りに合わせることが当たり前になってしまったので、

無理していることに気がつかなかったのです。

 

本当の自分で生きたいと思っても、

自分がどんな人間だったのか、

すっかり忘れてしまって思い出せないのです。

 

でも、主人公が世間から余計な干渉をされないように気を付けていることが

私自身が自分を殺していったプロセスを何となく共通する部分があって

これから自分を思い出す上でヒントになりそうだなと、思いました。

 

▼関連記事/自分らしく生きるためにあれこれ模索しています。

 

amimia.hatenablog.com

 

 

 

【まとめ】

個人的な感想が多くなってしまいましたが、

人間関係に悩みを抱えている人や、

子育て中の方やお仕事で教育に関わる方、

異文化の方と関わっていらっしゃる方、

様々な方にとって参考になる小説だし、

人間観察がお好きな方も楽しめる、

人によって感じ方も様々な小説だなと思います。

 

 ami